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閉業のお知らせ

株式会社三豊工業ニンジャボット事業部は、2023年3月31日をもちまして3Dプリンター製造販売事業を終了することとなりました。
2014年より建築資材販売施工会社の新規事業として開始してから9年間継続してきましたが、これ以上は継続が難しくなってしまいました。皆様には大変お世話になりました。

4月1日以降は製品の販売は行わず、メールでのサポートのみとなります。メールサポートの終了は9月末の予定です。

電子機器やプログラミングとは全く畑違いで何もわからない私でしたが、関係していただいた皆様やお買い求めいただいたお客様のおかげでこれまで何とか事業を続けて来られました。大変ありがとうございました。


4月1日以降のニンジャボットクッキーとニンジャボットコペンにつきまして

1.「保証期間(ご購入後半年)が残っている製品に関しての保障」に対する対応は保証期間満了まで引き続き当社にて責任をもって行います。

2.保証期間が終了した製品の修理及び保証期間内であってもお客様の使用による故障およびノズル詰まりによる修理対応は別の会社様で引き継いでいただける予定となっております。詳細は決まり次第ホームページ上でお知らせいたします。

3.使い方が分からない、うまくプリントできない、PCを買い替えたためソフトがインストールできない等のよくあるお問合せにつきましてはまずはユーザーサポートをご確認ください。それでも解決しない問題に関してはお問い合わせいただければ9月末まではメールにて対応させていただきます。


NJBシリーズ及び特注機器につきまして

NJBシリーズ及び特注機器をお買い上げいただきましたお客様つきましてのサポート対応は当シリーズの3Dプリンターの設計を担当しておりましたエムズラボ(東京都)様が引き継ぎます。まずは当社までメールにてご連絡ください。

再度になりますが重ね重ねお世話になりました。本当にありがとうございました。

株式会社三豊工業 代表取締役 佐藤俊也

事務所移転のご案内

平素は格別のご高配を賜り 厚く御礼申し上げます。
このたび、Ninjabotの事務所が移転することになりました。
新住所
〒421-0113 静岡県静岡市駿河区下川原6丁目30-19
10月18日(月)より新住所での営業となります。

なお、13日(水)〜16日(日)は引っ越し作業のため休業させていただきます。
何卒ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。

コペン・クッキー専用ソフト(スライサー)で3DCADデータ(STL)をプリント用データ(G-code)に変換し保存した後、そのデータを削除して次の新しいSTLを取り込んでも前のモデルが画面に表示されてしまう

PC内のセキュリティーソフトの影響の場合がございます。保存したデータを削除して新しいデータに書き換えるという動作をセキュリティーソフトが予期しない書き換えが起こったと判断して異常と感知してしまい書き換えさせないという反応をする場合がございます。その際にはセキュリティーソフトのセキュリティーレベルを下げるなどしていただく必要がある場合がございます。

スライスソフトは何も入っていないまっさらなPCで動作チェックを行い正常を確認しておりますのでスライスソフトとお客様のPC環境の組合せによってはうまく動作しない場合がございますがソフト自体の不具合ではございません。

コペン・クッキー専用ソフト(スライサー)で3DCADデータ(STL)をプリント用データ(G-code)に変換し保存しようとするとソフトが勝手に終了してしまう。

スライサーソフトのデータ変換処理にはある程度PCに負担がかかります。アプリやソフトをたくさん起動させていたり、PCの容量が小さい場合処理が追いつかず落ちてしまう場合がございます。アプリやソフトを閉じていただきPCを再起動してから再度お試しください。

またPC内のセキュリティーソフトの影響でスライサーがうまく動かない場合もございます。データを保存する際にはファイルが書き換わるため、セキュリティーソフトが予期しないファイルの書き換えを異常と感知して書き換えさせないという反応をするなど、PCに搭載されたセキュリティーソフトの影響でソフトが正常に動かない場合がございます。その際にはセキュリティーソフトのセキュリティーレベルを下げるなどしていただく必要がある場合がございます。

スライスソフトは何も入っていないまっさらなPCで動作チェックを行い正常を確認しておりますのでスライスソフトとお客様のPC環境の組合せによってはうまく動作しない場合がございます。

付属のSDカードにスライスしたデーター(G-code)を保存し、プリンタに差し込んでプリントボタンを押してプリントは始まったが途中で止まるまたはすべてプリントされないで終了してしまう

SDカードに完全にデーターが書き込まれていない場合とスライスする前の3DCADデータ(STL)に不具合がある場合があります。

いったんSDカードをフォーマット(初期化)してからニンジャボットのユーザーサポートからコペンまたはクッキーのテストプリントデータを選びSDカードに保存し、プリントしてみてください。これでプリントが正常に行われる場合にはプリンター本体の不具合の可能性は低いです。

このケースの場合の多くがスライスする前の3DCADデータそのものに不具合がある場合が多いです。例えば3DCADの中で複数のパーツを作って一体化させて1つのデータを作ったつもりが画面上では一体化しているように見えても実際のデータは完全に一体化されていないときなどは複数のデータの間に境界面があるためそこでプリントは終了してしまいます。完全な一体化を再度確認して下さい。

付属のSDカードにスライスしたデーター(G-code)を保存し、プリンタに差し込んでプリントボタンを押してもランプが点滅するばかりで印刷が始まらない

ケース1:ファイル名が正しくない

ファイル名が半角英数字になっているか確認して下さい。
ファイル名は半角英数字のみ使用できます。大文字英数字やカタカナひらがな、漢字などは使用できません。

ケース2:データに不具合がある

SDカードに完全にデーターが書き込まれていない場合とスライスする前の3DCADデータ(STL)に不具合がある場合があります。

いったんSDカードをフォーマット(初期化)してからニンジャボットのユーザーサポートからコペンまたはクッキーのテストプリントデータを選びSDカードに保存し、プリントしてみてください。これでプリントが正常に行われる場合にはプリンター本体の不具合の可能性は低いです。SDカードに書き込んだはずのデータが完全に書き込まれていないかスライスする前の3DCADデータ(STL)自体が不完全な可能性がございます。SDカードを入れてプリントボタンを押してもプリントが始まらない場合のほとんどがこちらの原因になります。

いずれにしてもきちんとデーターが書き込まれていない状態です。テストプリントデータでもプリントが始まらない場合には当社までご連絡ください。(通常はプリントボタンを押して1分程度以内にはプリントが始まります)

インタビュー/株式会社共栄コーポレーション 代表取締役 湯浅勝保様

ユーザーインタビュー

インタビューにお応えいただく湯浅様
インタビュー日:2018年10月4日
株式会社共栄コーポレーション
代表取締役
湯浅勝保様
「ちょっとしたモノを簡単に作れる」のが3Dプリンターの良いところ。容易にモノづくりができるのは大きなメリットです。

株式会社共栄コーポレーションについて

共栄コーポレーションは、1979年にシルクスクリーン印刷などを手掛ける印刷会社としてスタートしました。当初はデパートやスーパーなどで使われるディスプレイの製造などを行ってきました。創業から当面はアナログの時代でしたが、創業から20年ほど経つとアナログからデジタルへ転換する時代がやってきました。当然の事ながら、印刷機をデジタルに転換するとともに、仕事そのものもデジタルに対応する必要性が生じてきました。

一方、印刷の世界でデジタル化が進むと、インクジェットプリンターなどの価格が軒並み下がり始めました。また、印刷の世界でもグローバリゼーションが進み、例えば日本で作ったデータをもとに中国で印刷するといったことがなされるようになりました。中国で印刷するとコストは日本の15分の1です。これでは食べていけないということで、新たな仕事を模索し始めたのです。

当時は、同時に省エネが意識され始めてもいて、なにか省エネに関連する仕事がないか考えました。そこで、看板サインで使う導光板を製造することを思い付きました。導光板とは、LEDを光源にしてアクリルのエッジに照射し、板全体を光らせるパネルのようなものです。これを使えば、光る看板を作ることが可能になります。この導光板をベースにしたパネルやサインの製造が、現在の当社の主たる事業になっています。

3Dプリンターを導入した理由

まず、導光板の仕組みを簡単に説明しましょう。導光板は、アクリルの板に細かい点々が刻まれたパネルです。その点々がLEDからの光を反射します。その光らせ方にノウハウがあるのですが、LEDの光を単にパネルにあてるだけではきれいにまんべんなく、かつ充分に光りません。光は光源に近い方が強く、遠い方が弱いので、バランスがとれなくなるのです。

そこで、バランスをとるために、光源を何かにあてて乱反射させる必要があるのです。その「何か」を、当初はマシニングなどの切削機でつくっていました。その「何か」ですが、当社ではリフレクターと呼んでいますが、リフレクターを切削で作ると時間がかかり、コストも大変です。もっと簡単に作る方法はないかと考えていた中、3Dプリンターの導入を思いついたのです。

主力製品のSLパネル。印刷物の下のパネルが光る

主力製品のSLパネル。印刷物の下のパネルが光る

3Dプリンターで作ったリフレクター

3Dプリンターで作ったリフレクター

3Dプリンターと出会ったきっかけ

私が3Dプリンターと出会ったきっかけですが、展示会です。10年くらい前に展示会で見かけて、さっそくある海外メーカーの3Dプリンターを購入しました。

3Dプリンター導入で得られたメリット

3Dプリンターを導入して得られたメリットですが、なんといっても試作品を速く安く作れるようになったことです。リフレクターをはじめ、パネルのコーナー用部材などの試作品も簡単に作れます。切削でつくるとコストも時間もかかります。

また、試作品の形状確認ができるのも大きなメリットです。例えば、営業マンがクライアントと打ち合わせをする際に、実際のモノを見ながら一緒に確認することができます。

端的にいえば、「ちょっとしたモノを簡単に作れる」のが3Dプリンターの良いところです。容易にモノづくりができるのは大きなメリットです。

3Dプリンターで作ったパネルコーナー部品の試作品(左)

3Dプリンターで作ったパネルコーナー部品の試作品(左)

ニンジャボットを選んだ理由

ニンジャボットを選んだ理由ですが、まずはデザインがオープンでいじりやすいと考えたからです。例えば、ある海外メーカーの3Dプリンターはカバーで囲まれたボックスタイプで、中もブラックボックスになっています。ニンジャボットの3Dプリンターであれば、何か起きても自分でいじって対応できそうだと考えました。私自身機械加工は得意なので、最悪自分でもトラブルに対応できると考えました。

また、サポートがしっかりしてそうだと考えたのも理由です。ある海外メーカーの場合、サポートはメールの対応のみで、電話でのサポートが受けられません。ニンジャボットであれば、電話でサポートしてもらえるし、場合によっては現場に来てもらえる。サポートが充実しているのも理由のひとつです。

また、ニンジャボットが国産だというのも選んだ理由です。当時はすでに中国産、台湾産、韓国産などの安価な3Dプリンターが出回っていましたが、国産の方が信頼できるだろうと考えました。

3Dプリンターの利用頻度

現在、当社では3台の3Dプリンターが稼働しています。利用頻度はいずれも高いです。使う時は24時間連続で使います。試作品の形状確認などを行う際は、文字通り朝から晩まで使っています。ある時はリフレクターの試作品を200種類くらい作りましたが、この部屋に籠って連日不眠不休で動かし続けました。

ソフトウェアについて

ソフトウェアについてですが、3Dデータはソリッドワークスで作っています。ソリッドワークスで作った3Dデータを、シンプリファイでスライスしています。ソリッドワークスは、マシニングを入れた25-26年ほど前から使っています。ソリッドワークスを長らく使っているので、今でも図面を描くのは苦になりません。

素材について

使っている素材はPLAとABSです。作るモノによって使い分けています。いずれも良いところと悪いところがあり、試行錯誤しながら使っています。使う量はPLAの方が多いです。PLAで作ってみて、駄目ならABSで作ってみるというやり方もしています。

PLAは硬いですが、弾力性に欠けています。ABSは、弾力性はありますが、プリントしづらいのが難点です。反るという欠点もあります。ABSは、小さいモノを作るのに向いていると思います。

3Dプリンターに改善を希望する点

ニンジャボットの3Dプリンターに改善を希望する点ですが、なんといってもヘッドを取り外しできるようにアタッチ式にしてほしいです。他のメーカーは、そのようなタイプのものをすでに出しています。ノズルの掃除も楽になりますし、調整も簡単になります。ニンジャボットにも、ぜひそのタイプを出していただきたいです。

また、これはある海外の3Dプリンターメーカーに関してですが、彼らの3Dプリンターは値段が安すぎます。値段が安すぎてサポートが不十分になっています。あまりにも安い値段では、メール対応だけしかできません。電話や対面でのサポートができるように、それなりの値段をつけるべきです。

3Dプリンターがモノづくりの現場に与える影響

3Dプリンターがモノづくりの現場に与える影響ですが、試作が安直になることによって、製品化が速くなると思います。試作品を金型から作るとなると大変です。コストも相当かかります。試行錯誤して色々作ったりすると、下手をすると億単位のコストがかかります。

今後は3Dプリンターの造形スピードがもっと速くなるでしょうから、そうなると製品開発のスピードももっと速くなるでしょう。また、充分な性能を持ったカラー3Dプリンターが普及すれば、例えばブロー成型の現場など、モノづくりの現場で様々に活用されるようになると思います。

これから3Dプリンターの導入を検討される方へのアドバイス

正直に申しますと、3Dプリンターをまったく使ったことがない、または3Dプリンターの使い方がよくわからないといった人は、まずはある程度使えるようになってから導入を検討すべきだと思います。特に若い人であれば自分で勉強し、それほど時間をかけなくても3Dプリンターを使えるようになるはずです。3Dプリンター自体の原理や機構もそれほど複雑ではありません。

あと、サポートがしっかりした会社の製品を選んだ方がいいでしょう。3Dプリンターも機械ですから必ずトラブルが生じます。トラブルが起きた際のサポートが特に重要です。トラブルにしっかりと対応してくれるところを選んだ方がいいです。

NJB-300W
ご購入いただいたニンジャボットNJB-300W
株式会社共栄コーポレーションのホームページ
http://www.kyoei-corp.jp/
文責:合同会社ニンジャボット前田健二

インタビュー/国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所 海洋先端技術系 再生エネルギー研究グループ 羽田絢様

ユーザーインタビュー

インタビューにお応えいただく羽田様
インタビュー日:2018年7月2日
国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
海上技術安全研究所
海洋先端技術系 再生エネルギー研究グループ
羽田絢様
ネットなどで色々情報を集め、ニンジャボットは私どものニーズに対して問題のない製品と判断しました

海上技術安全研究所とご自身のお仕事について

海上技術安全研究所は、国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所を構成する一研究機関です。海上交通の安全および効率の向上のための技術や、海洋資源および海洋空間の有効利用のための技術、海洋環境保全のための技術に関する研究を包括的に実施しています。

私が所属するのは、海洋先端技術系の再生エネルギー研究グループという部署です。洋上での再生可能エネルギー利用は、新エネルギー利用の機運と海洋空間の有効活用から幅広く研究が実施されている分野で、その中でも浮体式風力発電は日本での高い発電ポテンシャルが期待されており、現在実証事業も盛んに行われています。私は、所内で模型実験や数値解析を通じて浮体式の風力発電施設に関する研究に参加しています。

なお、風力発電の洋上への展開は、1.有効設置面積の多さ、2.風の条件が良い(障害物が少なく乱れが少ない)などの理由で広まっています。欧州では支持構造物を固定した「着床式」の風車が一般的ですが、これは水深の増加とともにコストも増加します。日本近海は比較的大水深であり、着床式を適用するよりも支持構造物を浮体で構成する浮体式を導入する方が最終的なコスト減につながると目されています。

3Dプリンターに出会ったきっかけ

私は模型製作が趣味なので、3Dプリンターについては模型方面で活用され始めたころから認知していました。最初期は敷居の高さからあまり関心がなかったのですが、ブログや雑誌記事などでかなり精度が向上したことを知り、これは業務にも活用できるのではないかと注目しました。

3Dプリンターの利用用途

3Dプリンターの利用用途ですが、主に模型試験におけるジグ製作に利用しました。私が担当する模型試験では、水槽に浮かべた浮体式風車の模型に波や風を当てて、その挙動を調査します。その際、センサーを模型などに設置するのですが、試験ごとに異なる模型を使用することもあるため、同じジグを使い回すことが困難です。そこで、自由度の高い3Dプリンターを活用しています。以下に具体的な事例を示します。

1.ピトー管の固定ジグ製作
風速のベクトルを計測するピトー管を固定するためのジグを作成しました。ピトー管は風速のX、Y、Z、3成分を計測するため、取り付け角度の精度が計測精度に直結します。加えて、使用したピトー管は6角形の軸であるために固定方法に工夫が必要でした。これを改善するため、軸の形状を合わせた固定ジグを作成しました。これにより、ピトー管を容易に所定位置に固着可能となりました。

風速の3次元ベクトルを測るので、取り付け向きが重要だが、六角形なので対応しにくい

(風速の3次元ベクトルを測るので、取り付け向きが重要だが、六角形なので対応しにくい)

隙間が六角形になるような冶具を作成(白い部品が冶具)

(隙間が六角形になるような冶具を作成(白い部品と青い部品が治具))

2.画像計測用マーカの固定ジグ製作
2次元運動を計測するための画像計測システムを利用する際に3Dプリンターを使用しました。浮体式風車模型と読み取り用のマーカが取り付けられたLアングルを接続するジグを作成しました。模型に直接取付ける部材であるため軽量化が要請され、3Dプリンターによりジグを軽く作成できるメリットは大きいです。また、試験毎に異なる模型を扱うことが多いため、それぞれに適切な形状のジグを作成可能な点は有効です。

風車模型の円柱とLアングルをつなぐ冶具

(風車模型の円柱とLアングルをつなぐ冶具)

3.模型の振動抑制ジグ製作
模型の仕様上不可避な振動が、試験結果に与える影響を確認するためのジグを作成しました。当時使用した模型は、制御可能な可動機構を有していたのですが、機構の関係上バックラッシュが発生していました。模型全体を強制的に動かす試験では、このバックラッシュによる意図しない微小振動が試験結果に影響を与える可能性があると思い、確認試験を提案しました。可動部を固定するジグを、試験を提案した当日中に設計、出力し、翌日の確認試験に用いました。その結果、この振動が試験結果に与える影響は、ほぼないことが確認できました。これは、3Dプリンターを導入しなければ即座には解決できなかった事例です。

風車模型の振動を抑制する冶具

(風車模型の振動を抑制する冶具)

ニンジャボットを選んだ理由

選んだ理由は、まずは国内製だということです。初めて導入するものでしたから、サポートなどを考えると外国製だと難があると考えました。ネットなどで色々情報を集め、私どものニーズに対して問題のない製品と判断しました。

ソフトウェアについて

ソフトウェアに関して、CADはライノセラスを使っています。スライサーはCURAを使っています。

素材について

使っている素材ですが、PLAがメインです。使用事例も多く、十分な剛性を有しており、出力時のクセも少ないので気に入っています。ABSなどの他の素材も試しましたが、PLAほどうまくいきませんでした。

3Dプリンターに改善を希望する点

3Dプリンターに改善を希望する点ですが、ハード的には特に不満はないのですが、素材ごとに3Dプリンターの設定や使い方が変わるのが難点だと感じています。素材ごとの設定方法などをシートかなにかにまとめて、情報提供してもらえると助かります。また、冬にプリントする時は室内の温度も影響します。そういうことも含めて3Dプリンティングのティップスなどをまとめてもらえるといいと思います。

3Dプリンターの造形スピードについてですが、購入前からそういうものだという認識でしたので、特に不満はありません。ただし、速くなるというのであれば、より望ましいと考えます。

また、3Dプリンターの出力品を浮体模型として直接使用したこともありますが、模型が小型であったことと、出力品へ水が浸透したことにより、模型全体の自重と浮力のバランスが崩れ、試験がうまく実行できなかったという結果になりました。水中で使うには問題があります。PET系の素材なども試しましたが、水を吸ってしまってうまくいきませんでした。

3Dプリンターが変える社会

3Dプリンターの性能が向上し、家庭や職場に一般的に普及すると、流通の概念が変わる可能性があると思います。例えば、スマホケースが欲しい場合、今でしたら店に買いにゆくか、ネットで注文して配達してもらうしかありません。しかし、3Dプリンターが普及すれば、スマホケースの3Dモデルをダウンロードして、自分で出力することが可能になります。もちろん今でもそのようにする人はいると思いますが、将来的にはそうするのが普通の世の中になると思っています。そうなると、世の中の流通は今とは全く異なるものになるでしょうし、もしかしたら船舶など、私達のフィールドにも直接影響があるかもしれません。ただし、そのようなことが実現するまでには、あと30年くらいはかかるかもしれませんが。

これから3Dプリンターの導入を検討される方へのアドバイス

これから3Dプリンターの導入を検討される方へのアドバイスですが、とりあえず興味があれば始められるといいと思います。何か大変なことをしなければいけないということもありませんので、作りたいものがあれば、とりあえず導入されるといいでしょう。

海上技術安全研究所
国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
海上技術安全研究所のホームページ
https://www.nmri.go.jp/
文責:合同会社ニンジャボット前田健二

インタビュー/川崎精工所 営業部課長 荒川貴志様 製造技術部技術課長 川上知範様 製造技術部製造課生産管理係長 松井理様

ユーザーインタビュー

インタビューにお応えいただく荒川様、川上様、松井様(奥から順)
インタビュー日:2018年7月10日
株式会社川崎精工所
営業部課長 荒川貴志様
製造技術部技術課長 川上知範様
製造技術部製造課生産管理係長 松井理様
検査冶具の製造にかかる時間を
短縮できたのも大きなメリットです。

株式会社川崎精工所について

株式会社川崎精工所は1922年創業の金属プレス・金属加工会社です。創業から昭和30年代位までは主にブリキのおもちゃを作ってヨーロッパへ輸出していました。
昭和40年代位から自動車部品の製造を始め、今に至るまでに当社の主力事業になっています。
現在は事業の80%がマフラーなどの自動車部品の製造で、20%が住宅用部品、鉄道車両用部品の製造となっています。住宅用部品では、木造住宅の建設金具などを主につくっています。いずれにせよ、メインの仕事は金属プレスです。

かつてヨーロッパへ輸出していたブリキのおもちゃ

3Dプリンターに出会ったきっかけ

当社が3Dプリンターに出会ったきっかけですが、鉄道車両用部品の製造を検討していたある時、モノ造り以外の部分でなんとか客先のコストダウン要求に対応できる方法がないかと模索したのが発端です。
ご存知かも知れませんが、鉄道車両用部品は典型的な「少量多品種」の部品であり、自動車部品のように大量に作られるものではありません。
少量多品種の部品の品質を確保し、検査工程を簡素化するために3Dプリンターで検査冶具を作れないかと考えたのです。

検査冶具とは、文字通り出来上がった製品の外形や形状を検査するために使う冶具です。鉄道車両用部品は点数も多く、部品ごとに検査冶具が必要です。
その検査冶具をマシニングなどで製造していたら莫大なコストと時間がかかります。3Dプリンターであれば材料のコストも安いので、購入して試してみようという話になりました。

その話がされたのは5年ほど前でしたが、当時はすでに3Dプリンターというものの存在がある程度一般に知られていました。当社も、3Dプリンターがどのようなもので、どのような働きをするかについてはそれなりの知識を持っていました。

ニンジャボットを選んだ理由

私が3Dプリンターを導入した理由ですが、最大の理由は「色々な事に使えそうだな」といった漠然としたものです。
特に事前に特定の使用法を想定していたわけではありません。とりあえず使ってみて、何ができるのか確かめながら考えるといった、ある意味場当たり的な考えでした。
プラスチック製の小型の部品の修理などにも使えそうだとは考えていましたが、純粋な好奇心というのが正直なところです。

3Dプリンターを導入して、まずはデータをとることから始めました。色々なデータを集め、どういうモノがどういう条件のもとで作れるのか、試行錯誤しました。

ニンジャボットを選んだ理由

当社がニンジャボットを選んだ理由ですが、ネットで検索して情報を集めるうちにニンジャボットのホームページに辿り着きました。
そして、ニンジャボットの3Dプリンターのスペックが、我々のニーズに合致すると考えたからです。特に、造形サイズが我々の想定していたものに近かったです。また、価格も妥当であると考えました。

導入してすぐに冶具づくりを開始

ニンジャボットの3Dプリンターを導入して、すぐに冶具づくりを開始しました。何しろ部品の種類が多いので、休みなしにほとんど毎日稼働させました。
検査冶具を早く準備するほど検査工程が楽になります。それゆえ、品質管理のグループから「早く冶具をくれ」とせつかれる毎日でした。
当時は全部で150種類の鉄道車両用部品を作っていましたので、検査冶具も150種類必要になります。それゆえ、できる限り稼働させて少しでも早く作ろうとしました。

実際に冶具を作ってみて、3Dプリンターの弱点もわかりました。3Dプリンターは、縦の方向の造形はいいのですが、穴とかを作るのが苦手です。
特に竪壁に付ける穴とかの造形が苦手です。つぶれたり、きれいに造形できないケースが多い。そのような時は、ドリルで修正したりして対応しました。

なお、3Dプリンターを導入する前は、検査冶具は金属加工で作っていました。手間がかかる上に、コストも馬鹿になりませんでした。

ニンジャボットで製造した検査冶具(黄色)

手前の2つは板金加工で作られた製品。これを検査冶具にあてがい図面通り作れているかを検査する。左奥はニンジャボットで作詩した検査冶具。右奥は従来の切削加工等による金属製の検査冶具。

ニンジャボットで製造した検査冶具(黄色)

3Dプリンター導入で得られたメリット

3Dプリンターを導入して得られたメリットですが、まずは3Dプリンター導入によるコスト削減効果です。
もし3Dプリンターを導入せずに、すべての検査冶具を金属加工で作っていたとしたら物凄いコストがかかったはずです。3Dプリンターなら、3-4千円程度のフィラメント1スプールで部品が3-4点作れてしまいます。
ひとつの検査冶具あたりわずか千円です。単純に比較すると、金属加工で作る場合の1割ぐらいのコストです。このコスト削減効果が、3Dプリンターを導入して得られた最大のメリットです。

また、検査冶具の製造にかかる時間を短縮できたのも大きなメリットです。金属加工ですと、検査冶具をひとつ作るのに1日かかります。図面も引かなければなりません。
3Dプリンターなら、3Dモデルのデータさえ作ってしまえば4時間程度でプリントできます。

また、サンプル品などを3Dプリンターで製造し、営業などのプレゼンテーションに使えるようになったこともメリットです。
以前でしたら、紙の図面などをもとに営業マンや技術者がお客さんと商談するしかありませんでした。
ところが、3Dプリンターでサンプルを作ってお客さんの手にとってもらうことで商談がスムーズになり、話もすんなりとまとまるようになりました。

ソフトウェアについて

社内で使っているソフトウェアですが、ソリッドワークスを使っています。ソリッドワークスは以前から使っていて、3Dプリンターは後から来た感じです。
当社のメインのお客様がソリッドワークスを使っているため、当社もソリッドワークスを使っています。ソリッドワークスで作った3Dモデルを.stlに変換し、スライサーソフト経由で3Dプリンターへ送っています。

3Dプリンターに改善を希望する点

ところで、3Dプリンターには課題もあります。鉄道車両用部品の検査冶具は問題なく作れても、自動車部品などの、より高い精度が求められる部品のための検査冶具を作る事は、今のところ出来ていません。
自動車部品は曲面が多く、曲面に穴があいている部品などは特に難しいです。

また、3Dプリンターの利用に関する情報が提供されていないのも問題だと思います。
例えば、こういう形状のものをプリントする際にはスライサーの設定をこうするといった、トラブルシューティングのような情報が日本語で提供されるといいと思います。

また、今の3Dプリンターは基本的に使い方が難しいです。3Dモデルを作るにもCADソフトを使う必要があります。
もっと簡単に、例えばボタン一つで操作できるようにしないと、一般レベルにはなかなか普及しないかもしれません。

これから3Dプリンターの導入を検討される方へのアドバイス

これから3Dプリンターの導入を検討される方へのアドバイスですが、3Dプリンターを購入する前に、3Dプリンターで出来る事と出来ない事をしっかりと把握する事が重要です。
出力サンプルを確認するなどして、自分の要求レベルを満たしているかを確認してください。

また、3Dプリンターを趣味で使うのか、または仕事で使うかによってもアドバイスは変わります。
趣味で使うのであれば、最初は数万円程度の安いものから始めるといいかもしれません。3Dプリンターとはどういうもので、どういう事が出来るのかといった基本を学ぶことから始めるといったイメージです。

一方、3Dプリンターを仕事で使うのであれば話は別です。
仕事で使う際は、まずは自分の要求レベルを確認し、それを満たす3Dプリンターを選ぶ必要があります。満たさない3Dプリンターを買ってしまうと取返しがつかなくなります。

ニンジャボット代表佐藤を入れてのワンショット 歴史を感じさせる川崎精工所の看板
株式会社川崎精工所のホームページ
https://www.kawasaki-seikosho.co.jp/
文責:合同会社ニンジャボット前田健二