インタビュー/川崎精工所 営業部課長 荒川貴志様 製造技術部技術課長 川上知範様 製造技術部製造課生産管理係長 松井理様

ユーザーインタビュー

インタビューにお応えいただく荒川様、川上様、松井様(奥から順)
インタビュー日:2018年7月10日
株式会社川崎精工所
営業部課長 荒川貴志様
製造技術部技術課長 川上知範様
製造技術部製造課生産管理係長 松井理様
検査冶具の製造にかかる時間を
短縮できたのも大きなメリットです。

株式会社川崎精工所について

株式会社川崎精工所は1922年創業の金属プレス・金属加工会社です。創業から昭和30年代位までは主にブリキのおもちゃを作ってヨーロッパへ輸出していました。
昭和40年代位から自動車部品の製造を始め、今に至るまでに当社の主力事業になっています。
現在は事業の80%がマフラーなどの自動車部品の製造で、20%が住宅用部品、鉄道車両用部品の製造となっています。住宅用部品では、木造住宅の建設金具などを主につくっています。いずれにせよ、メインの仕事は金属プレスです。

かつてヨーロッパへ輸出していたブリキのおもちゃ

3Dプリンターに出会ったきっかけ

当社が3Dプリンターに出会ったきっかけですが、鉄道車両用部品の製造を検討していたある時、モノ造り以外の部分でなんとか客先のコストダウン要求に対応できる方法がないかと模索したのが発端です。
ご存知かも知れませんが、鉄道車両用部品は典型的な「少量多品種」の部品であり、自動車部品のように大量に作られるものではありません。
少量多品種の部品の品質を確保し、検査工程を簡素化するために3Dプリンターで検査冶具を作れないかと考えたのです。

検査冶具とは、文字通り出来上がった製品の外形や形状を検査するために使う冶具です。鉄道車両用部品は点数も多く、部品ごとに検査冶具が必要です。
その検査冶具をマシニングなどで製造していたら莫大なコストと時間がかかります。3Dプリンターであれば材料のコストも安いので、購入して試してみようという話になりました。

その話がされたのは5年ほど前でしたが、当時はすでに3Dプリンターというものの存在がある程度一般に知られていました。当社も、3Dプリンターがどのようなもので、どのような働きをするかについてはそれなりの知識を持っていました。

ニンジャボットを選んだ理由

私が3Dプリンターを導入した理由ですが、最大の理由は「色々な事に使えそうだな」といった漠然としたものです。
特に事前に特定の使用法を想定していたわけではありません。とりあえず使ってみて、何ができるのか確かめながら考えるといった、ある意味場当たり的な考えでした。
プラスチック製の小型の部品の修理などにも使えそうだとは考えていましたが、純粋な好奇心というのが正直なところです。

3Dプリンターを導入して、まずはデータをとることから始めました。色々なデータを集め、どういうモノがどういう条件のもとで作れるのか、試行錯誤しました。

ニンジャボットを選んだ理由

当社がニンジャボットを選んだ理由ですが、ネットで検索して情報を集めるうちにニンジャボットのホームページに辿り着きました。
そして、ニンジャボットの3Dプリンターのスペックが、我々のニーズに合致すると考えたからです。特に、造形サイズが我々の想定していたものに近かったです。また、価格も妥当であると考えました。

導入してすぐに冶具づくりを開始

ニンジャボットの3Dプリンターを導入して、すぐに冶具づくりを開始しました。何しろ部品の種類が多いので、休みなしにほとんど毎日稼働させました。
検査冶具を早く準備するほど検査工程が楽になります。それゆえ、品質管理のグループから「早く冶具をくれ」とせつかれる毎日でした。
当時は全部で150種類の鉄道車両用部品を作っていましたので、検査冶具も150種類必要になります。それゆえ、できる限り稼働させて少しでも早く作ろうとしました。

実際に冶具を作ってみて、3Dプリンターの弱点もわかりました。3Dプリンターは、縦の方向の造形はいいのですが、穴とかを作るのが苦手です。
特に竪壁に付ける穴とかの造形が苦手です。つぶれたり、きれいに造形できないケースが多い。そのような時は、ドリルで修正したりして対応しました。

なお、3Dプリンターを導入する前は、検査冶具は金属加工で作っていました。手間がかかる上に、コストも馬鹿になりませんでした。

ニンジャボットで製造した検査冶具(黄色)

手前の2つは板金加工で作られた製品。これを検査冶具にあてがい図面通り作れているかを検査する。左奥はニンジャボットで作詩した検査冶具。右奥は従来の切削加工等による金属製の検査冶具。

ニンジャボットで製造した検査冶具(黄色)

3Dプリンター導入で得られたメリット

3Dプリンターを導入して得られたメリットですが、まずは3Dプリンター導入によるコスト削減効果です。
もし3Dプリンターを導入せずに、すべての検査冶具を金属加工で作っていたとしたら物凄いコストがかかったはずです。3Dプリンターなら、3-4千円程度のフィラメント1スプールで部品が3-4点作れてしまいます。
ひとつの検査冶具あたりわずか千円です。単純に比較すると、金属加工で作る場合の1割ぐらいのコストです。このコスト削減効果が、3Dプリンターを導入して得られた最大のメリットです。

また、検査冶具の製造にかかる時間を短縮できたのも大きなメリットです。金属加工ですと、検査冶具をひとつ作るのに1日かかります。図面も引かなければなりません。
3Dプリンターなら、3Dモデルのデータさえ作ってしまえば4時間程度でプリントできます。

また、サンプル品などを3Dプリンターで製造し、営業などのプレゼンテーションに使えるようになったこともメリットです。
以前でしたら、紙の図面などをもとに営業マンや技術者がお客さんと商談するしかありませんでした。
ところが、3Dプリンターでサンプルを作ってお客さんの手にとってもらうことで商談がスムーズになり、話もすんなりとまとまるようになりました。

ソフトウェアについて

社内で使っているソフトウェアですが、ソリッドワークスを使っています。ソリッドワークスは以前から使っていて、3Dプリンターは後から来た感じです。
当社のメインのお客様がソリッドワークスを使っているため、当社もソリッドワークスを使っています。ソリッドワークスで作った3Dモデルを.stlに変換し、スライサーソフト経由で3Dプリンターへ送っています。

3Dプリンターに改善を希望する点

ところで、3Dプリンターには課題もあります。鉄道車両用部品の検査冶具は問題なく作れても、自動車部品などの、より高い精度が求められる部品のための検査冶具を作る事は、今のところ出来ていません。
自動車部品は曲面が多く、曲面に穴があいている部品などは特に難しいです。

また、3Dプリンターの利用に関する情報が提供されていないのも問題だと思います。
例えば、こういう形状のものをプリントする際にはスライサーの設定をこうするといった、トラブルシューティングのような情報が日本語で提供されるといいと思います。

また、今の3Dプリンターは基本的に使い方が難しいです。3Dモデルを作るにもCADソフトを使う必要があります。
もっと簡単に、例えばボタン一つで操作できるようにしないと、一般レベルにはなかなか普及しないかもしれません。

これから3Dプリンターの導入を検討される方へのアドバイス

これから3Dプリンターの導入を検討される方へのアドバイスですが、3Dプリンターを購入する前に、3Dプリンターで出来る事と出来ない事をしっかりと把握する事が重要です。
出力サンプルを確認するなどして、自分の要求レベルを満たしているかを確認してください。

また、3Dプリンターを趣味で使うのか、または仕事で使うかによってもアドバイスは変わります。
趣味で使うのであれば、最初は数万円程度の安いものから始めるといいかもしれません。3Dプリンターとはどういうもので、どういう事が出来るのかといった基本を学ぶことから始めるといったイメージです。

一方、3Dプリンターを仕事で使うのであれば話は別です。
仕事で使う際は、まずは自分の要求レベルを確認し、それを満たす3Dプリンターを選ぶ必要があります。満たさない3Dプリンターを買ってしまうと取返しがつかなくなります。

ニンジャボット代表佐藤を入れてのワンショット 歴史を感じさせる川崎精工所の看板
株式会社川崎精工所のホームページ
https://www.kawasaki-seikosho.co.jp/
文責:合同会社ニンジャボット前田健二