インタビュー/株式会社AKAISHI 商品開発セクション 村岡真様

ユーザーインタビュー

株式会社AKAISHI 商品開発セクション 村岡真様
インタビュー日:2018年3月5日
株式会社AKAISHI 商品開発セクション 村岡真様
これまで2週間かかっていたものが
本当に1日で出来るようになりました。

株式会社AKAISHIについて

株式会社AKAISHIの歴史は昭和21年にまで遡ります。創業者赤石銀蔵が下駄生地製造業「赤石銀蔵商店」を創業したのが始まりです。
昭和33年にはサンダル資材製造事業へ転業し、平成2年に当時の社長の肝いりで現在の事業の柱の一つである健康雑貨製造事業へ進出しました。
健康雑貨製造事業は現在非常に好調で、売上に大きく貢献しています。

メイン事業である履物製造事業と共に、当社を支えています。当社の商品は、直営店舗やロフト、東急ハンズなどの店舗、インターネットショップ等で販売しています。
商品はすべて社内で企画しています。ニンジャボットは主に健康雑貨の軟質な商品の開発で使用しています。

稼働中のニンジャボット

3Dプリンターを導入したきっかけ

我が社が3Dプリンターを始めて導入したのが2007年です。
今から10年以上前ですが、当時はまだ3Dプリンターという言葉が一般的ではありませんでした。
履物を開発製造する際にはラストという足型が必要となります。
ラストは主に靴のフォルムを形作る為に必要なのですが、3Dプリンター導入前は外注して作っていました。
ラストはABS樹脂を削って作りますが、外注すると納期は2週間程度かかり、コストも馬鹿になりません。
社内でラストを作る方法は外注の切削加工以外にないのか?と試行錯誤し始めました。

また、当時はプロダクトデザインも内製化し、CADも導入していました。
CADを使って社内でラストをデザインしても、実際にモノになるには2週間もかかる。何とかならないだろうかという問題意識もありました。
そのため、ラストを社内で内製化する具体的な方法を探し始めたのです。
そういった方面に詳しい人に相談したり、あるいはインターネットで情報を集めたりしているうちに、どうやら3Dプリンターというものがあると判りました。
2007年にアメリカのストラタシス社の3Dプリンターを導入しました。

3Dプリンターを導入した事で得られたメリット

3Dプリンターを導入した事で得られたメリットですが、非常に大きなものがありました。まず、期待していた納期の短縮ですが、これまで2週間かかっていたものが本当に1日で出来るようになりました。
また、コストも大きく下がりました。外注するとそれなりのコストがかかるため、それまでは試作品は数回しか作れませんでした。
ところが、3Dプリンターでは納期が短い為、より多くの試作品を作る事が出来ます。製品の質を上げるという事が命題であるメーカーとしてはこの違いは非常に大きいです。

当初、ラスト作りを内製化するために3Dプリンターを導入したのですが、次第にプロダクトデザインの試作にも利用するようになりました。
プロダクトデザインを形にする試作品は試作金型や切削加工で作成していたのですが、ここに画期的な3Dプリンター製が加わったのです。

デザインの試行錯誤を経てつくられたベストセラー製品

ニンジャボットを導入した理由

ニンジャボットを導入した理由は、軟質素材が使用可能である為です。フレックス系の柔らかい素材を使える3Dプリンターを探していて、ニンジャボットに辿り着きました。
しかもニンジャボットは同じ静岡市内で、近隣にあり、早急にコンタクトして、デモを拝見させて頂いて、導入を決めました。
AKAISHIではニンジャボットは柔らかいものの試作品づくりに、かかせない道具となり、開発が多忙な時期は毎日、毎晩、稼働しています。

3Dプリンターで試作品づくりをするメリット

3Dプリンターで試作品づくりをするメリットですが、何と言ってもデザインを実際にモノにして手にし、形状などを確認出来る事でしょう。
実際にモノを作ってみて、部品同士を組み合わせたり、部品の位置を検証したり、デジタルデータだけでは実感できない事が確認出来ます。
金型などはコストも高く、失敗が許されません。3Dプリンターで試作を数回重ねて、より良い商品の開発が可能となります。
又、パッケージデザインの検証も可能となります。
図面で絵を見ながらパッケージデザインするよりも、実際の形状を手にしながら行った方がより洗練されたイメージも湧きます。

3Dプリンターが日本のモノづくりに与える影響

3Dプリンターが日本のモノづくりに与える影響ですが、私見ですが、当社のような企画開発型のメーカーにとっては非常にメリットは大きいと思います。
上述した通り、3Dプリンターで試作品を作る事で、より洗練された商品を生み出す事が開発であると思います。
コストと納期が下がるのもありがたいです。
試作等のものづくりを行わないメーカーなどではメリットはないと思いますが、当社のように新製品を毎年出しているメーカーでは非常に大きなメリットが生まれます。

ソフトウェアについて

当社で使っているソフトウエアですが、主にThinkDesignというCADソフトを使っています。デザイン系のメーカーで使用するには使い勝手が良いかと思います。
ThinkDesignでデザインしたデータをSTLに変換して3Dプリンターで出力しています。

以前はφステーションという工業系のソフトウエアを金型作成用、プロダクトデザイン用に併用していました。
プロダクトデザインに優位性のあるThinkDesign導入は、必然であったと考えます。

AKAIISHI健康雑貨の新商品のアイデアの出し方

新商品のアイデアですが、まず、マーケティング部門から「次の時期にこういうものを売りたい」というインプットがあります。
このインプット情報に基づき、外部デザイナーも加わり、商品の構想や実現性、実際の設計、デザイン、といった開発業務にあたります。

開発の初期段階から、とりあえず、3Dプリンターで試作してみるという場合が多いです。
開発アイテムが絞られてからもデザイン変更や強度・機能検証などを3Dプリンターで繰り返し造形し、洗練された商品へと進化していきます。

これから3Dプリンターの導入を検討される方へのアドバイス

これから3Dプリンターの導入を検討される方へのアドバイスですが、ソフト(主に3次元CAD)はクリエイティブなものを造形したい場合は必需品ですので、
あらかじめ、調査、検討した方が良いかと思います。既にあるSTLデータをそのまま造形するのであれば、ハード(3Dプリンター)だけで良いかと思います。

また、3Dプリンターは値段と精度が比例するかと思います。
3Dプリンターに求める精度はデモやサンプル等で確認出来ますので、3Dプリンターの展示会に赴くのも購入の 参考になるかと思います。

社内のアイデアから生まれた各種の製品
株式会社AKAISHIのホームページ
http://www.akaishinet.com/