インタビュー/ナノダックス株式会社 取締役営業部長 福山稔朗様

ユーザーインタビュー

ナノダックス株式会社 取締役営業部長 福山稔朗様
インタビュー日:2018年1月24日
ナノダックス株式会社 取締役営業部長 福山稔朗様
まずは何のために3Dプリンターを
導入するのか目的を明確にすることです。

ナノダックス株式会社について

ナノダックス株式会社はもともと、釣り糸の製造に使われるナノレベルの添加剤からスタートしています。
ナイロンの釣り糸の強度を上げるために使われる添加剤です。
その後、グラスウールメーカーと共同で、グラスウールを樹脂に練りこんだグラスウール強化熱可塑性樹脂製造工法の開発に成功しました。それが当社の主力製品になっています。
グラスウールは綿状で、一般的には断熱材に使われており、冷蔵庫の断熱部品などにも使われています。

私どものビジネスモデルですが、製品を直接製造していません。
我々は、開発した製造技術のライセンス・ノウハウを販売しています。すべてファブレスでビジネスを展開しています。

3Dプリンターの世界に入ったきっかけ

我々が3Dプリンターの世界に入ったきっかけですが、PP(ポリプロピレン)のフィラメントで良いものがないかという話があったからです。
PPは安く、耐薬品性に優れ、アルカリにも酸にも水にも強く、軽くて用途も広い。
車などでは使われている樹脂部品の半分はPP製です。それほど大量に使われているPPが、なぜか3Dプリンターのフィラメントとしては使われていません。
なぜ、PPのフィラメントが存在していないのか?色々と調べたところ、PPは樹脂の収縮が大きいので3Dプリンターで使えるものが本当に存在しない事がわかりました。
FDM方式の3Dプリンターの世界は特殊で、使える樹脂はABSかPLAがほとんどです。
PPなら安いし、前述したように多くのメリットがあります。
それなら、フィラメントまで作れる技術を持っている我々が作ってしまおうという話になったのです。
弊社の代表の藤田鉦則のポリシーとして、「世の中にないものをつくる」というものがあります。
3Dプリンターの世界を見まわしてみて、収縮が大きくてPPのフィラメントが存在しないなら、グラスウールを配合して収縮をコントロールできるのではと考えて、試行錯誤した結果、造形性に優れたPPのフィラメントを完成させました。

ニンジャボットの3Dプリンターを導入した理由

ニンジャボットを導入した理由ですが、PPのフィラメント製造の話が出た時に、提携先の会社からご紹介をいただいたからです。
提携先の会社でニンジャボットが導入されていて、テストなどもニンジャボットを使って行っている。
それならば我々もニンジャボットにしようという話になりました。また、ニンジャボットが国産というのも理由のひとつです。

なお、ニンジャボットを導入した際に、ニンジャボット以外のメーカーの製品も導入しました。
有名な外国メーカーの製品も複数導入しています。我々のフィラメントをそれぞれの機種で実際に出力してみて、テストしています。

ポリプロピレンフィラメントの売れ行き

PPのフィラメントは開発が終わり、既に上市していますが、国内での売れ行きはまだこれからの段階です。
海外、韓国では、石膏の代わりとして足の装具用(ギブス)の素材として採用が決まりました。
また最近では自社デザインで義足用に使えないか試作を繰り返しています。

国内ではまだ3Dプリンターの価格が未だに高いという問題があるかも知れません。
造形の精度も、反りが生じるなど決して良くない。メンテナンスのコストも高い。
ハイエンドの3Dプリンターでは価格が数千万円もするし、一方、低価格の3Dプリンターは使える樹脂が限定されるなど、趣味の世界はともかく、ものづくりの現場での実用に耐えうるものではないと思います。
自動車メーカーなど、一部で3Dプリンターを既に導入されているところもありますが、中には使い方がわからないといったケースもあります。
端的に言えば、日本のモノづくりで求められるレベルには達していないのかも知れません。

日本における3Dプリンターの今後

日本における3Dプリンターの今後についてですが、B2Cであればある程度普及するかも知れません。
学校や個人の趣味などで使う人が増えてくる可能性はあるでしょう。
一方で、B2Bではそれほど普及しない可能性もあると考えます。現在の3Dプリンターの性能などを考えるに、コンシューマー用の自動車や家電関係などのモノづくりの現場で一般的に使われるようになるかどうかは、まだ未知数でしょう。

現在のFDM方式の3Dプリンターが抱える課題として、スピードの問題があります。
FDM方式の3Dプリンターは造形のスピードが遅過ぎます。また、3Dデータを作るのが素人には難しい。
誰でも簡単に3Dデータを作れるようにならないと、3Dプリンターが広く普及するのは難しいかも知れません。

さらには素材の問題もあります。3Dプリンターで使える素材の選択肢をもっと増やす必要があります。
色々な樹脂素材が使えてきちんと造形できる、さらにはトラブル時のサポートやサービス体制が充実すれば、日本でも3Dプリンターはもっと普及すると思います。

3Dプリンターの利用用途

3Dプリンターの利用用途ですが、フィラメントの造形性テストや耐久テストに使っています。
ロット間のばらつきなどをチェックしたり、着色の具合などをチェックしています。また、造形時の反りなどもチェックしています。なお、3Dプリンターは毎日使っています。

ナノダックスが開発したPPフィラメント「3Dmagic」

これから3Dプリンターの導入を検討される方へのアドバイス

これから3Dプリンターの導入を検討される方へのアドバイスですが、まずは何のために3Dプリンターを導入するのか目的を明確にすることです。
3Dプリンターを何に使うのかによって話が全く違ってきます。また、求める造形サイズや精度も明らかにしておく必要もあります。
精度をそれほど求めないのであれば、安い3Dプリンターでも十分でしょう。さらには、使う素材もあらかじめ明確にした方が良いです。

3Dプリンターも機種によって性能にばらつきもあります。また、サポートやメンテナンスなども含めてトータルでコストを見た方が良いでしょう。
トラブルが生じた際にきちんと問題解決してもらえるのかも重要です。
故障した際の対応などは非常に大きな問題です。メーカーによっては対応が不十分なところもあります。
3Dプリンターを使っていると必ずトラブルに見舞われます。ノズルが詰まってしまったり、造形が崩れてしまったり、等々です。そのようなトラブルが生じた際の、メーカーのサポート体制を見極めることも重要です。

ナノダックス株式会社様のホームページ
http://www.nanodax.jp/