インタビュー/株式会社共栄コーポレーション 代表取締役 湯浅勝保様

ユーザーインタビュー

インタビューにお応えいただく湯浅様
インタビュー日:2018年10月4日
株式会社共栄コーポレーション
代表取締役
湯浅勝保様
「ちょっとしたモノを簡単に作れる」のが3Dプリンターの良いところ。容易にモノづくりができるのは大きなメリットです。

株式会社共栄コーポレーションについて

共栄コーポレーションは、1979年にシルクスクリーン印刷などを手掛ける印刷会社としてスタートしました。当初はデパートやスーパーなどで使われるディスプレイの製造などを行ってきました。創業から当面はアナログの時代でしたが、創業から20年ほど経つとアナログからデジタルへ転換する時代がやってきました。当然の事ながら、印刷機をデジタルに転換するとともに、仕事そのものもデジタルに対応する必要性が生じてきました。

一方、印刷の世界でデジタル化が進むと、インクジェットプリンターなどの価格が軒並み下がり始めました。また、印刷の世界でもグローバリゼーションが進み、例えば日本で作ったデータをもとに中国で印刷するといったことがなされるようになりました。中国で印刷するとコストは日本の15分の1です。これでは食べていけないということで、新たな仕事を模索し始めたのです。

当時は、同時に省エネが意識され始めてもいて、なにか省エネに関連する仕事がないか考えました。そこで、看板サインで使う導光板を製造することを思い付きました。導光板とは、LEDを光源にしてアクリルのエッジに照射し、板全体を光らせるパネルのようなものです。これを使えば、光る看板を作ることが可能になります。この導光板をベースにしたパネルやサインの製造が、現在の当社の主たる事業になっています。

3Dプリンターを導入した理由

まず、導光板の仕組みを簡単に説明しましょう。導光板は、アクリルの板に細かい点々が刻まれたパネルです。その点々がLEDからの光を反射します。その光らせ方にノウハウがあるのですが、LEDの光を単にパネルにあてるだけではきれいにまんべんなく、かつ充分に光りません。光は光源に近い方が強く、遠い方が弱いので、バランスがとれなくなるのです。

そこで、バランスをとるために、光源を何かにあてて乱反射させる必要があるのです。その「何か」を、当初はマシニングなどの切削機でつくっていました。その「何か」ですが、当社ではリフレクターと呼んでいますが、リフレクターを切削で作ると時間がかかり、コストも大変です。もっと簡単に作る方法はないかと考えていた中、3Dプリンターの導入を思いついたのです。

主力製品のSLパネル。印刷物の下のパネルが光る

主力製品のSLパネル。印刷物の下のパネルが光る

3Dプリンターで作ったリフレクター

3Dプリンターで作ったリフレクター

3Dプリンターと出会ったきっかけ

私が3Dプリンターと出会ったきっかけですが、展示会です。10年くらい前に展示会で見かけて、さっそくある海外メーカーの3Dプリンターを購入しました。

3Dプリンター導入で得られたメリット

3Dプリンターを導入して得られたメリットですが、なんといっても試作品を速く安く作れるようになったことです。リフレクターをはじめ、パネルのコーナー用部材などの試作品も簡単に作れます。切削でつくるとコストも時間もかかります。

また、試作品の形状確認ができるのも大きなメリットです。例えば、営業マンがクライアントと打ち合わせをする際に、実際のモノを見ながら一緒に確認することができます。

端的にいえば、「ちょっとしたモノを簡単に作れる」のが3Dプリンターの良いところです。容易にモノづくりができるのは大きなメリットです。

3Dプリンターで作ったパネルコーナー部品の試作品(左)

3Dプリンターで作ったパネルコーナー部品の試作品(左)

ニンジャボットを選んだ理由

ニンジャボットを選んだ理由ですが、まずはデザインがオープンでいじりやすいと考えたからです。例えば、ある海外メーカーの3Dプリンターはカバーで囲まれたボックスタイプで、中もブラックボックスになっています。ニンジャボットの3Dプリンターであれば、何か起きても自分でいじって対応できそうだと考えました。私自身機械加工は得意なので、最悪自分でもトラブルに対応できると考えました。

また、サポートがしっかりしてそうだと考えたのも理由です。ある海外メーカーの場合、サポートはメールの対応のみで、電話でのサポートが受けられません。ニンジャボットであれば、電話でサポートしてもらえるし、場合によっては現場に来てもらえる。サポートが充実しているのも理由のひとつです。

また、ニンジャボットが国産だというのも選んだ理由です。当時はすでに中国産、台湾産、韓国産などの安価な3Dプリンターが出回っていましたが、国産の方が信頼できるだろうと考えました。

3Dプリンターの利用頻度

現在、当社では3台の3Dプリンターが稼働しています。利用頻度はいずれも高いです。使う時は24時間連続で使います。試作品の形状確認などを行う際は、文字通り朝から晩まで使っています。ある時はリフレクターの試作品を200種類くらい作りましたが、この部屋に籠って連日不眠不休で動かし続けました。

ソフトウェアについて

ソフトウェアについてですが、3Dデータはソリッドワークスで作っています。ソリッドワークスで作った3Dデータを、シンプリファイでスライスしています。ソリッドワークスは、マシニングを入れた25-26年ほど前から使っています。ソリッドワークスを長らく使っているので、今でも図面を描くのは苦になりません。

素材について

使っている素材はPLAとABSです。作るモノによって使い分けています。いずれも良いところと悪いところがあり、試行錯誤しながら使っています。使う量はPLAの方が多いです。PLAで作ってみて、駄目ならABSで作ってみるというやり方もしています。

PLAは硬いですが、弾力性に欠けています。ABSは、弾力性はありますが、プリントしづらいのが難点です。反るという欠点もあります。ABSは、小さいモノを作るのに向いていると思います。

3Dプリンターに改善を希望する点

ニンジャボットの3Dプリンターに改善を希望する点ですが、なんといってもヘッドを取り外しできるようにアタッチ式にしてほしいです。他のメーカーは、そのようなタイプのものをすでに出しています。ノズルの掃除も楽になりますし、調整も簡単になります。ニンジャボットにも、ぜひそのタイプを出していただきたいです。

また、これはある海外の3Dプリンターメーカーに関してですが、彼らの3Dプリンターは値段が安すぎます。値段が安すぎてサポートが不十分になっています。あまりにも安い値段では、メール対応だけしかできません。電話や対面でのサポートができるように、それなりの値段をつけるべきです。

3Dプリンターがモノづくりの現場に与える影響

3Dプリンターがモノづくりの現場に与える影響ですが、試作が安直になることによって、製品化が速くなると思います。試作品を金型から作るとなると大変です。コストも相当かかります。試行錯誤して色々作ったりすると、下手をすると億単位のコストがかかります。

今後は3Dプリンターの造形スピードがもっと速くなるでしょうから、そうなると製品開発のスピードももっと速くなるでしょう。また、充分な性能を持ったカラー3Dプリンターが普及すれば、例えばブロー成型の現場など、モノづくりの現場で様々に活用されるようになると思います。

これから3Dプリンターの導入を検討される方へのアドバイス

正直に申しますと、3Dプリンターをまったく使ったことがない、または3Dプリンターの使い方がよくわからないといった人は、まずはある程度使えるようになってから導入を検討すべきだと思います。特に若い人であれば自分で勉強し、それほど時間をかけなくても3Dプリンターを使えるようになるはずです。3Dプリンター自体の原理や機構もそれほど複雑ではありません。

あと、サポートがしっかりした会社の製品を選んだ方がいいでしょう。3Dプリンターも機械ですから必ずトラブルが生じます。トラブルが起きた際のサポートが特に重要です。トラブルにしっかりと対応してくれるところを選んだ方がいいです。

NJB-300W
ご購入いただいたニンジャボットNJB-300W
株式会社共栄コーポレーションのホームページ
http://www.kyoei-corp.jp/
文責:合同会社ニンジャボット前田健二